No.8 現金商売の税務調査と現金管理

通帳と現金の画像

飲食店のような日々の売上を現金で入金する現金商売では、税務署は現金管理の現場の実態を把握し、その証拠を掴むために、事前告知なしに抜き打ちに調査に来ることが多くなります。これは現物確認調査ともいいます。そこで、現金の実際有高と帳簿残高に差額があると、お店の現金管理の信頼性は失墜し、計上された売上額は信用されず、より厳しい調査となります。現金残高の差額(不突合)=不正(売上除外)では決してないので、調査官がそのようなことを言い出したら毅然として不正はしていないことを主張してください(調査官が簡単に納得することはないと思いますが)。

現金残高の差額は、売上の面だけではなく、支払いの面からも発生します。例えば、事業主が立替払いをして領収書に基づいて現金出納帳に記帳したが精算していなかった場合は、実際の現金残高は過大になります。反対に、店の現金で経費の支払いをしたが、領収書を紛失して現金出納帳に記帳し忘れた場合は、実際の現金残高は過小になります。

事前通知なしの抜き打ち調査であっても、強制調査ではなく、あくまでも任意調査ですので、突然のことで他の用事が既にありどうしても対応できないのであれば、そのことを調査官に正直に話して、その日はお引き取り願って後日に延期してもらうことは可能です(但し、調査官は「1時間でもいいから・・・」と言って執拗に粘ると思います)。しかしながら、調査の延期は可能でも、調査自身を中止にしてもらうことは出来ません。

また社長(事業主)様が不在で連絡がとれない場合、店内に入れて調査をさせてはいけません。社長(事業主)様の許可を必ず受けて下さい。

身分証明書等で調査官の在職税務署名、氏名を記録したら、次に顧問税理士に連絡して下さい。顧問税理士は税務調査の代理権限を持っているので、税務調査には必ず顧問税理士に立ち会ってもらいたい旨を伝えて下さい。そして、税務調査は顧問税理士が来るまで待ってほしい又は顧問税理士と連絡がとれない(又は顧問税理士が今日は予定があって立ち会えない)から調査は延期してほしいと伝えて下さい。

調査官は事前通知のない現況を確認するのが目的で来ているので「ハイそうですか」と簡単に帰ることは絶対にありません(本日以降、現金残高等を適正に突合するので、調査を延期したら全く意味がない)、執拗に粘ります。

顧問税理士は税務調査の代理権限を持っていますが、社長(事業主)様が同意すれば、顧問税理士の立ち会いなしで税務調査を受けることもできます。そこで、何もやましいところがなければ、顧問税理士の立ち会いがなくても(間に合わなくても)1時間程度の短時間に限定して、必要最低限の部分の確認をしてもらい早々に帰ってもらうのも一つの対応かと思います。

1.現金管理等のポイント
① 現金は、事業(商売・店)と個人(非事業用・奥)と明確に区別して管理する。
② 売上はその都度、売上伝票及びレジに記録する。そしてそれらに基づき、その日のうちに現金出納帳(売上帳)に記入する。
その日の売上高は、売上伝票、レジペーパー、実際の現金残高から確定する。
③ 現金残高は、毎日数えて帳簿残高と突合する。出来れば金種表を作成する。
④ 現金の実際有高と帳簿残高の差額が生じた場合、その日のうちに原因を究明する。
⑤ 経費の支払いは極力預金振替(小切手払いを含む)にし、レジからの現金払いを減らす。
⑥ 自社の商品等(原材料を含む)を自家消費した分を売上に計上する。
非事業用(プライベート)消費・贈答については、その分の現金を入れる。入れなければ法人の場合、その者に対する貸付金または役員報酬(損金不算入)となる。事業用の贈答や従業員に提供した分は入金する必要はないが、売上に計上するか(借方 交際費等)、または仕入から減算して該当科目に振替える。(交際費××× 仕入×××)
⑦ 商品、製品、原材料のロスを把握する。
⑧ 売上伝票は、連番(通し番号)付きのものを使用し、書き損じても廃棄しない。
⑨ 釣り銭は定額とする。
⑩ 従業員の「賄い食」は基本的には現物給与で課税されます。
⑪ 売上伝票、レジペーパーのロール、現金出納帳(売上帳)、予約簿、出前帳等は7年間保存してください。

上級編
① 売上金で経費の支払いをしない。そのため、現金払い経費を支払うための小口現金を設ける(小口現金出納帳を作成する)。
更に一歩進んで、現金払いの経費はとりあえず個人(非事業用)が立替え払いし、後日、同額を事業用預金から引出すことにより精算し、小口現金も廃止する。
② 毎日、その日の売上額を預金に預入れる。結果として預金通帳が売上帳になる。
数日分まとめて預入れる場合でも、1日分ずつ分けて記帳する。

これらの現金管理は必ず毎日行ってください。税務署は突然やってきます。

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