No.5 経営移譲(生前の事業承継)と贈与税

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経営移譲において、不動産以外の農業用財産(動産)は貸借しようとしても税務上、原則として贈与があったものとして取り扱われます。動産とは、棚卸資産の他、農業機械、器具備品、車両等の減価償却資産があります。

その金額が年間110万円を超えると贈与税の申告・納付が必要です。

1.但し、棚卸資産以外の動産で特に贈与を留保する旨の申出があり、かつ、その申出のあった財産の価格を、旧経営者を被相続人とする相続財産価格に算入することを了承したものについては税務上、贈与がなかったものとして取り扱われます。

「不動産以外の農業用財産の贈与を留保する旨の申出書」を税務署に提出します。贈与を留保する財産の一覧表も添付します。実際に、それらを贈与した場合(贈与税の申告・納付)は提出の必要はありません。

2.棚卸資産については、「贈与」か「売買」します。賃借はあり得ません。贈与については贈与税を考慮します。売買は取得価格で売れば、売却益は計上されないので、課税関係は生じません。後継者は自己資金でその代金を負担する必要があります。その代金を支払うために、他(旧経営者等)から資金を借りたならば、借用書を作成して返済計画を立て、実際に返済してください。

3.不動産、農業用財産は使用賃借(無償の賃借)とするのが一般的です。もちろん売買でも結構です。決済代金はその資産の帳簿価格でいいと思います。

生計を一にする親族に地代家賃、賃借料、借入金の利子、給与(専従者を除く)等を支払っても必要経費になりません。受け取った者も所得になりません(但し、贈与税の対象になる可能性があります)。生計を一にしない親族については、このような規制はありません。但し、対価として相当な額である必要があります。使用貸借の場合、その所有権は旧経営者にあるので、旧経営者の相続の際は必ず、それらを相続財産に加えてください。

農業用財産が少額の場合、使用貸借ではなく、贈与または売買を考えてみるのも結構です。その結果、旧経営者の農業用財産は減少します。但し、支払った売買代金分だけ預金(または売掛債権)は増えます。

4.旧経営者の売掛金を後継者の通帳に振り込んで、後継者が事業に使えば、旧経営者から後継者に対する贈与になります。旧経営者の借入金や買掛金、未払金を後継者が支払えば(後継者の農業口座で落とす)、逆に、後継者から旧経営者への贈与となります。通常、旧経営者に専従者給与を支払って、自分で返済してもらうことになると思います。

5.生計を一にする親族名義の農業用財産の固定資産税や減価償却費、借入金の利息、賃借料、保険料、修繕費等は後継者が負担していなくても(実際に負担していても贈与になりません)、後継者の必要経費にすることができます。貸借対照表や減価償却台帳に親族名義の資産の取得価額や耐久年数、未償却残高をそのまま引継いで計上します。これは生計を別にしている親族のものには適用されないので注意してください。

6.経営移譲だからといって、旧経営者の農業用現金・預貯金を自由に使えるわけではありません。「贈与」か「賃借」しかありません。贈与については贈与税を考慮します。賃借ならば借用書を作成して返済計画を立て、実際に返済してください。

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